


- 2025/10/07
- 日々是好日
- カイロプラクティック哲学を受講して
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はじめに
去る9月27日、28日に東京品川のきゅりあんにて、カイロジャーナル主催の「第3回カイロプラクティック・フェスティバル」が開催されました。2日間にわたって10名の先生方の貴重なお話を聞けました。ここでは、上部頸椎専門カイロプラクターとして45年以上の臨床経験を持つ、賀来 史同(かく ふみひと)先生の「カイロプラクティック哲学」を簡単にまとめました。「カイロプラクティックと整体は何が違うの?」「なぜ、たった一箇所へのアプローチで全身が変わるの?」。多くの人が抱くカイロプラクティックへの疑問。その答えは、カイロプラクティックが持つ深い哲学の中にあります。ここでは、賀来先生の講演内容をもとに、私たちの体に秘められた偉大な力と、カイロプラクティックの役割についてご紹介します。
カイロプラクティックの三本柱「真・善・美」
カイロプラクティックは、単なる手技療法ではありません。それは「哲学」「科学」「芸術」という三つの要素が一体となったものです。
これは、普遍的価値「真・善・美」という概念で表します。
・真(哲学):真実であると。カイロプラクティック的には正しく確立された理論であること。
カイロプラクティック哲学を代表する本に『カイロプラクティック教本(1927年出版)』があります。その中に33の根本原理があり、そのNo.1が大前提です。
「宇宙の叡智はすべての物質の中に存在しており、それはすべての物質に特性と活動を与え続けている」
この宇宙の叡智というのは、生命が知的であるという大前提に基づいている。カイロプラクティックではその知的存在を宇宙の叡智と呼んでいる(ユニバーサルインテリジェンス)。
宇宙の全ての構造、機能、秩序は宇宙の叡智によって全て把握されており、この全ての物質の中に人間の体も含まれています。ですから、カイロプラクティックはこの大前提を元に確立された理論が臨床のベースとなっているということです。
・善(科学):良い行いであること。体にとって有益であり、その有効性を科学的に証明できること。
ただその症状が取れたから効いたという判断ではなく、本当にそれが有効であるか、無害であるか、視覚を通して、データを通して証明できなければ意味がない。賀来先生は、皮膚表面温度の計測や重心の測定などをされており、アジャストメント(矯正)前後の再現性と有効性を証明できることが大切という。サブラクセーション(歪み)が存在している時のデータと、サブラクセーションをアジャストメントした後に身体が変化している、自然治癒の過程にある状態ということをデータで証明できれば、極端な話、患者さんに対してその症状を聞く必要はないということです。賀来先生は症状が何であれ、病名が何であれ、アジャストメントは上部頸椎の一箇所です。ですから、ここ一箇所で変化する事、全体が変わるということを科学的に証明しています。他のカイロプラクティックであっても、科学的データで自分のやっていることは正しいこと、安全なこと、有効なことを証明できれば、患者さんにも本来のカイロプラクティックの姿が正しく伝達されて、整体とカイロプラクティックの違いや誤解を生むようなこともなくなります。
・美(芸術):調和が取れていること。美しく価値があること
美は人々に感動を与えるものであることです。私たちの身体は自然の一部です。人体の造形美と身体の機能は、宇宙の叡智によって創造されたものであり、自然がもたらした自然美です。自然とは調和の取れた状態ですから、身体の機能も調和が取れていることがベスト。カイロプラクティック的には調和の取れた状態はサブラクセーションのない状態です。サブラクセーションがなければ、あとは先天的知能、イネイトの力によって自然の法則に則って本来の状態に再生される、それを自然治癒と言います。
私たちは、この三本柱を常に実践し、皆様の健康をサポートしています。
生命を司る三つの「知能」
カイロプラクティック哲学では、生命を動かす力を三つの知能で捉えます。
宇宙の叡智(ユニバーサル・インテリジェンス)
宇宙創造と存在の根源。すべての存在の根源。宇宙の法則の根源です。私たちはこの宇宙の法則の中で生きていく、生かされているということになります。宇宙の叡智は宇宙生命とか宇宙精神とか、宇宙意識、宇宙の魂など、様々な表現で説明する場合もあります。
先天的知能(イネイト・インテリジェンス)人間一人ひとりの身体に生まれながらに備わっている、生命を維持し、体を治すための知能です。私たちが意識しなくても心臓が動き、怪我が治るのは、すべてこのイネイトの働きによるものです。内在の叡智、生得の叡智、この先天的知能が私たちの生命の本質、実態となります。これこそが自然治癒力の正体です。
後天的知能(教育された知能)教育や経験を通して得た知識や思考です。医学知識もこれに含まれます。しかし、この後天的知能が「本当に治るのだろうか?」といった不安や疑いを生み出し、イネイトの働きを邪魔してしまうことがあります。
カイロプラクティックの目的は、後天的知能の邪魔を最小限にし、あなたの内なるイネイト・インテリジェンスが100%働ける環境を取り戻すことにあります。
なぜ「上部頸椎」がそれほど重要なのか?
賀来先生の専門である上部頸椎カイロプラクティックでは、症状がどこにあっても、首の一番上にある骨(上部頸椎)のみにアプローチします。なぜなら、そこは**生命のコントロールセンターである「脳幹」**を守る、最も重要な場所だからです。
脳幹は呼吸、心臓の鼓動、血圧、体温など、生命維持に不可欠な機能を自動でコントロールしています。脳からのすべての指令は、この脳幹を通って全身へと送られます。
賀来先生はこれを**「家の配電盤のメインブレーカー」**に例えます。 上部頸椎にズレ(サブラクセーション)があると、このメインブレーカーが落ちかかった状態になり、脳からの生命エネルギー(イネイトの情報)が全身に届きにくくなります。その結果、体のあちこちで機能低下が起こり、腰痛や膝の痛み、内臓の不調といった様々な症状(ディスイーズ:不調和な状態)として現れるのです。
私たちは個別の症状を追いかけるのではなく、ただ一つ、このメインブレーカーを「カチッ」と元に戻すことに集中します。それが上部頸椎へのアジャストメントです。電源が回復すれば、あとはあなた自身のイネイトが、体を本来あるべき最高の状態へと導いてくれるのです。
治癒のプロセス:「好転反応」は快方へのサイン
アジャストメントを受けた後、イネイトが働き始めると、体は「大掃除」を開始します。その過程で、一時的にだるさが出たり、昔の痛みがぶり返したりすることがあります。これは**「好転反応」**と呼ばれ、体が本格的に治癒を始めた喜ばしいサインです。
しかし、後天的知能はこれを「悪化」と勘違いし、不安を感じてしまいます。私たちは事前にこのプロセスをしっかりご説明し、皆様が安心してご自身の治癒力に体を委ねられるようサポートします。
最後に:自分の内なる力を信頼する生き方へ
カイロプラクティックの哲学とは、生命への絶対的な信頼です。私たちの体は、私たちが考えるよりもはるかに賢く、完璧な自己治癒システムを備えています。その働きを妨げている唯一の障害物(サブラクセーション)を取り除き、あとは生命の力、イネイトの働きを100%信頼して待つ。
これは単なる治療法ではなく、宇宙の法則に則った生き方そのものです。自分の外に答えを求めるのではなく、自分の内なる力を信頼する。そうすれば、体だけでなく、人生もまた調和の取れた素晴らしいものになっていく。賀来先生は、45年間の臨床を通してそう確信していると締めくくられました。
(本記事は、2025年10月3日に行われた賀来 史同 先生の講演内容を基に、うるうカイロプラクティック院が構成・編集したものです。)